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逍遥の虚

このシナリオはCall of Cthulhu に対応。2~プレイ用。
舞台は昭和~平成元年頃までの30年近く前の日本。東北地方淡神郡椎江別市蓮田。
大きなカラオケ施設くらいしか娯楽のない街。

推奨:学生探索者
リアルアイディアに依存するので短い割に難易度高め。選択肢に脱出/逃走による真相を暴かないシナリオクリアを大いに含む。
カラオケに引き込む以前から導入を始めてダンジョン入りを拒まれることがないように注意。
クローズドサークルタイプ。

■あらすじ

 淡神郡椎江別市、私立蓮田ヶ丘高(中)校生の探索者は、同級生(または先輩後輩)の桜沢に定期テスト開けのカラオケに誘われる。
行き先は地元唯一の娯楽施設【大遊(タイユー)本館】、漫喫とカラオケ施設を一緒くたにしたような施設。
そこで探索者は完全なる不運としか言いようもなく、極めて恐ろしい怪異に巻き込まれることになる……

 

 

 

 

■NPC

 [​桜沢美貴(サクラザワ ミキ/ヨシタカ)]

導入役兼お荷物兼肉盾。

探索者をカラオケに誘った張本人。[インカレ壬菅大 都市伝説同好会]に所属。

性別は探索者によって合わせるなどする。

ステータスを用いる機会はないと思われるが、必要であれば適当な一般人のステータスを割り振る。

«Enemy»

 [榛名 嵩実(ハルナ タカミ)]​
敵NPC。探索者や桜沢と同じ学校の憧れの先輩。(性別はお好きに)

とある不死を探求する小規模宗教グループに属しており、召喚には成功したものの死を撒き散らす神格から命からがら逃亡。

遭遇次点で老化していて、生存者に遭遇すると呪文を用いて若さを吸い取ろうとしてくる。(■逃走者,を参照)

«Monster»

 塵を踏むもの(Quachil Uttaus)

※ステータス:基本ルールブック参照

 武器:接触による即死
 装甲:物理/魔法共に触れる前に塵と化す
 呪文:生死/時間/老化に関わるものを適宜
 正気度喪失:1d6/1d20

――――――――――

 とある不死を求める宗教的集団に召喚される。
その集団を召喚の直後塵に変えた後、取り逃がした榛名を探している。
彼を差し出す、または殺す、でなければ退散の呪文を用いることで去る。

 館内をうろついていると榛名を探し回って徘徊する塵を踏む者に遭遇することがある。
足音はない。塵を踏む者が通ったところは時の加速が大きいかもしれない。
スタート地点は3階カラオケエリアの大部屋とし、幸運などのダイス判定によるエンカウントにするか
階下での探索者の行動/時間経過によっての移動をアナログにコマなどで計算したエンカウントにするかなどはKPの裁量に任せる。

■導入

 探索者は椎江別市蓮田ヶ丘高校に在学中。
夏の定期テストから開放された教室で探索者は桜沢にカラオケの誘いを受ける。
探索者は大遊館が数日休館であることを知っているが、彼女はとあるツテで裏口から入れると主張する。
そして

「なんでも入り口が閉まってるだけで、中は営業してるらしい」

「それを知っている客だけが来店するのですこぶる空いているらしい」

などというウワサを披露。
何が何でもカラオケに探索者を引っ張り込むこと。
もしくは以上の光景を回想シーンとし、待ち合わせの場面から開始すること。

――――――――――

会話の終了、または途中で桜沢が通りすがりの榛名をみてうっとりする描写を挟むこと。
榛名は学校でも有名なハンサムで、常に同じチェーンネックレスを下げている。
女性の場合:指折りの美女で、常に同じペンダントを下げている。

■裏口

 待ち合わせ場所に行くと桜沢は既に来ている。(演出上遅刻させても良い。お好みで)
待ちかねたように裏口に案内され、いつもより省エネ気味の店内ではあるがカウンターでは店員が通常どおりに受け付けてくれる。

 └【目星】

    ・建物の裏手で裏口の他に搬入口を見つける

    ・店員のネームプレートは御厨(別に名字はなんでも良い)
内部ははいつもより若干照明が落とされているが、【聞き耳】で他の客の歌声なども幽かに聞こえ、
確かに入り口は閉まっているのに通常営業しているらしいことが伺える。

 店員に営業意図などの子細を聞いてもただ店長にワンオペで店番していろと言われた学生で何も知らない。(店長は不在)

 桜沢はフリータイムを指定する。

■異変

 ゲーム内時間で3時間ほど普通にカラオケを楽しんでもらう。
3時間後に小食のPCなら1d6、通常2d6を振ってもらい、ドリンクバーやトイレなどで何回席を立ったかを判定する。
1回外に出るたび3ヶ月ほど年を取ったことになる。
そして目星に成功した者は、自分達より良く出入りしていた桜沢が20代くらいに年を取っているように見えることに気がつく。
誰も目星に成功しなければ、再び3時間の判定を行う。
今度は目星に成功せずとも桜沢が若干老けている(20後半~30代)ことに気づける。
桜沢は探索者も少し大人びたように見えるなどと指摘し、不安がって帰りたがる。

■風化

 

 帰ろうと廊下に出ると目に見えて内装が劣化していることに気づける。
探索者達の年齢や所持品も長く廊下に居れば徐々に老化してくる。
特に内装や所持品は素材による経年劣化の仕方を考慮して描写すること。
この現象は喚び出された塵を踏む者が館内を徘徊しているために起こる。
ドアで遮られた空間は影響を著しく免れる。
そのため廊下に直接面している裏口や、暖簾でしか遮られていない厨房内、搬入口や閉じられた正面入り口も酷く経年劣化している。
特に裏口は劣化のため錆び付いて開けることができない。
無理に力を込めると取っ手は壊れてとれてしまうだろう。
屋外面は劣化していない普通の金属製ドアの為、蹴りや拳などで鍵開け(物理)を試みるようであれば相応の装甲ポイントと競わせること。

※ココで扉をぶっ壊して脱出するようならそれもまたエンディングの一つです。

■老化

 館内の廊下に居ると探索者は少しずつ年を取る。その老け具合は難易度調整分としてKPの裁量に任せる。
それとは別にカウンターの内側や他の客が居たらしき部屋内、廊下で制服を着た死に掛けの老人、またはミイラ化/塵化した遺体を見つけることができる。
塵化した遺体はただの粉溜りと化しているが、周囲にボロ切れとなった衣服の存在を認めた、または適当な学術技能で判定を試みるなどした場合
技能成功後アイデアの成功で『元』人間と判明し0/1d6ポイントのSANチェックである。
これらは逃げ出してきて手当たり次第に生存者の若さを吸おうとしている榛名か、または徘徊する塵を踏む者による仕業である。

 

■逃走者

榛名嵩実は吾神野に巣食うオカルト集団の一員であった。
彼らは不老不死を求める集団である。

塵を踏む者を讃え、その不死の恩恵に預かるためにカルナマゴスの魔書を読み解き忌わしき研究を続けていた。

 集団はあるとき塵を踏むものそのものを場に降ろすことに成功した。
しかし彼の存在が残酷なまでに気紛れであることまでには、露ほども想像が及んでいなかった……
触れるだけで『時』を奪われ塵と化す団員、命辛々逃げ出した榛名は脱出を試みる。
そして失われた『若さ』を取り戻すため、館内のわずかな人間を求めては彼らから若さを吸い出し

未だ彼(彼女)を罰すべく探し回っている塵を踏む者から逃れるため……大遊館からの脱出を試みるのであった。

榛名嵩実は探索者に出くわすととにかく若さを吸い出そうとしてくる。
端っから狂人のような振る舞いをさせてもよいし、逆に始めは友好的な態度をとろうとするかもしれない。

その辺りは雰囲気やPLの予想に合わせてKPが適宜調節してよい。

[榛名嵩実]
HP11 MP32 DEX10

忍び足70% 組み付き50%
キック25% 1d6
こぶし50%  1d3 バタフライナイフ25% 1d4
呪文:≪吸魂の呪文≫
(一回8MPの使用で使用者と犠牲者のMPを競わせ、勝った場合対象1体から毎ターンSTR/CON/DEX/POW/APPから各1ポイントずつ、1ポイントにつき1週間の若さを会得する。犠牲者は上記から毎ターン各1ポイントずつ喪失する。
但し満月の夜でなければ使用者は若さを得られない。犠牲者は死ぬ。
犠牲者が死ぬ前に使用者が死ねば取り消しとなり、犠牲者の若さは戻る。)
射程:視界に対象がおり、声が聞こえる位置であること。

――――――――――

榛名は集団の未熟な読み解きにより満月の条件を知らずに吸魂の呪文を使用してくる。
榛名が若さを取り戻すことはないが、吸われるものは吸われるので探索者にとっては十分脅威になりえるだろう。
(または舞台設定を『満月の夜』にアレンジしても面白いかもしれない)

■館内


 大遊館は3階建て。

中央部カウンターを挟んでカラオケ部(1F~3F)と満喫部(1F~3F)に分かれている。(上階はカウンターの変わりにドリンクバーなどがある。)
各部に一つずつ非常階段があり、兼用の中央階段は過装飾気味の螺旋階段である。

 基本的に角部屋を除いて窓は無い。

○カラオケ部
 ∟生存者/犠牲者(あらかじめ部屋を決めておくといい)
  榛名の犠牲者も塵を踏む者の犠牲者も大抵は塵芥に帰している。
 ∟カウンター
  内側では店員が老衰で死に掛けている。
  客名簿をチェックすれば現在何人が使用しているのかを知ることが出来る。
  3F奥大部屋使用の情報も手に入れられる。
  ラミネートされた店内のマップが手に入る。
 ∟店員控え(バックヤード)
  シフト表で店員の人数を知ることが出来る、午前午後に一人か二人ずつ。
  店員の名前などを確認していた場合でアイデアに成功すると

  老化した店員と最初に応対した店員が同一人物だと気づくことが出来る。 0/1d3のSANチェック。
   KPの裁量で3F非常用脱出口のヒントになる情報を与えても良いだろう。
 ∟厨房
  食品が腐っている。
  奥には搬入口があるが、厨房入り口はのれんで仕切られてるだけなので搬入口も朽ちて開かない。
 ∟3F奥大部屋(号数は適当に)
  複数人分の塵芥を目にすることが出来る。衣服まで全て塵になっている。
  残された辛うじて原型をとどめている荷物を漁ると、触った途端崩れる書類の他に
  【カルナマゴスの遺言:英訳版】を手に入れることが出来る。


   【カルナマゴスの誓約(カルナマゴスの遺言:英訳版)】
   魔術書(英語) 研究に要するのは16週間程/斜め読みは20時間 
   読み解けばクトゥルフ神話技能+6 正気度喪失1d3/1d7
   オリジナルから≪カーの分配≫と塵を踏む者以外の≪招来/従属≫が省かれた翻訳版。
     +吸魂
   この書物を読んだ際の加齢や塵を踏むものの呼び寄せの可能性のルールは
   KPコンパニオン記載の情報に従う。


 ∟3F各角部屋(適宜)
  避難梯子、または避難用斜降袋などが設置してある。ここから脱出可。

 ○満喫部
 ∟パーテーションで仕切られた小さな個室と大量の漫画が収められた本棚が並ぶ。

  基本的に客は居ない。こちらも塵を踏む者の徘徊ルートになる。
 

■脱出

○大遊館からの脱出方法。
 ①3階の避難用具を使用する。
 ②裏口等を物理的に破壊する。
 ③数日生き抜いて外部からの救助を待つ。

 ④探索者の提案で面白いと思ったものがあれば。

○塵を踏む者の退け方。
 ①榛名を塵を踏む者へ差し出す
 ②榛名を殺す
 ③カルナマゴスの誓約を斜め読みし≪塵を踏む者の退散≫を唱える。
  ∟まず7MPを使用することによって5%の退散の可能性が示される。
   以降1MPを上乗せするごとに5%ずつ成功率が上昇する。

 

■その後

 大遊館から脱出した君達。
自力での脱出ではなく救助を待つなどした場合は、興味本位で肝試しを行った末
建物の老朽化による影響で閉じ込め、という形で落ち着く。
もちろん大人にこっぴどく叱られる。
亡くなった人間は帰ってこない。塵を踏む者に奪われた時間も。
真相を知ることなく脱出した場合は、榛名や他の生存者がどうなったかは知る由も無いだろう。
そして……万が一、塵を踏む者がまだ滞在しているのに外部から救助が来た場合は……。

【報酬】

・生還した探索者 1d6のSAN値回復

・塵を踏む者を目撃した探索者 1d6のSAN回復

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その後
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